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NO20. (2007.3.12)  奈良県桜井市初瀬


★隠国(こもりく・・奥深い山間に隠れた地)の泊瀬(はつせ)

★長谷詣は平安女性貴族のあこがれ

【隠国(こもりく)は、初瀬(泊瀬・はつせ)にかかる枕詞で、奥深い山間に隠れた地のことで、万葉の時代も歌に詠まれていました。

こもりくの初瀬の地に長谷寺があり、「初瀬寺・泊瀬寺・豊山寺」とも呼ばれてきました。長谷寺は真言宗豊山派の総本山です。朱鳥元年(686)、道明上人が天武天皇のために千仏多宝仏塔を安置されたのが始まり。その後、神亀4年(727)に徳道上人は聖武天皇の勅願により、本堂に本尊の十一面観音菩薩をお祀りして依頼、全国の観音信仰の聖地になりました。平安時代の王族・貴族からも手厚い信仰を受けていました】

★平安女流文学との関連★
長谷寺は平安の文学にもしばしば登場します。『枕草子』清少納言も、『蜻蛉日記』の道綱の母、『更級日記】の菅原孝標の女も長谷詣をして書物にのこしています。

また、『源氏物語』の紫式部も「玉鬘(たまかずら)」の場面で、玉鬘が、消息のわからない母の夕顔会いたさに長谷詣をしている最中に、昔母に仕えていた侍女に再会し、観音さんのお引き合わせとして涙します。

★花の寺★
長谷寺といえばボタン、ボタンといえば長谷寺・・ボタンの名勝地です。この時期は人であふれかえります。私は数年前にボタンが終わってアジサイがこれから咲く・・という時期、たしか5月の終わりに訪れましたが、人がいなくてゆったりできたかわりに、広大な敷地は新緑ばかりで色が無く、殺風景でした。混雑でも花の色をとるか、閑居の無色をとるか二つにひとつです。アジサイもきれいですが、春先の満開の桜に囲まれる本堂・秋の紅葉に囲まれる本堂・冬の雪に囲まれた本堂・・と1年中観光客を楽しませてくれるスポットです。


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■泊瀬(はつせ)の山・・長谷寺の裏の山で標高548mの低い山■

万葉花(74) ◆隠国(こもりく)の 泊瀬(はつせ)の山 青幡(あおはた)の 忍阪(おしざか)の山は 走出(はしりで)の よろしき山の 出立(いでたち)の くわしき山ぞ 新しいき山の 荒れまくも惜しも
(作者不詳 巻12 三三三一)
(訳;初瀬の山も忍坂の山は、家から一走りしたところから見える美しく素晴らしい山である。この素晴らしい山が、だんだんと荒れていくのは惜しい。いつまでも美しい山であって欲しい)


万葉花(75) ◆隠国(こもりく)の 泊瀬(はつせ)の山に 照る月は 満ちかけしける人の常なき
(作者不詳 巻7 一二七〇)
(訳;初瀬の山に照る月は、満ちたり欠けたりして、人の一生の無常と同じである)


万葉花(76) ◆隠国(こもりく)の 泊瀬(はつせ)の山は 色つきぬ しぐれの雨に 隣りにけらしも
(坂上郎女 巻8 一五九三)

(訳;秋も深まり、初瀬の山が色づき始めた。山に時雨が降り注ぎいっそう美しい)


万葉花(77) ◆隠国(こもりく)の 杉の緑は かわらねど 泊瀬(はつせ)の山は 色づきにけり (作者不詳)
(訳;秋も深まり、杉は青々としているが、初瀬の山は色づいてきたことよ)


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■泊瀬(はつせ)の山・・・奥深い谷間で葬送の地、あの世ともとらえられていました。悲しい万葉歌も数々あります■


万葉花(78) ◆隠国(こもりく)の 泊瀬(はつせ)の山の 山の際(ま)に いざよふ雲は 妹にかもあらむ
(柿本人麿 巻3 四二八)
(訳;初瀬の山にいつまでも漂っている雲は、愛しい妻のかわり果てた火葬(ひはふり)の煙ではないだろうか。愛しい妻に再び会いたい)


万葉花(79)◆隠国(こもりく)の 泊瀬(はつせ)の山に 霞立ち たなびく雲は 妹にかあらむ
(作者不詳 巻7 一四〇七)
(訳;山深い初瀬の山に、霞のようにたなびく雲は、火葬(ひはふり)された愛しい妻の姿ではないだろうか。愛しい妻に再び会いたい)


万葉花(80)◆狂言(たはこと)か 妖言(およづれこと)や  隠国(こもりく)の 泊瀬(はつせ)の山に 廬(ろ)せりといふ
(作者不詳 巻7 一四〇八)
(訳;たわごとであって欲しい、うそであって欲しい。愛しい妻が初瀬の山に
葬られたことが今でも信じられない、信じたくない)

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絵;@総門・仁王門(重文) A本堂の屋根の尾上の鐘桜・長谷型燈籠・五重塔

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