（ＮＨＫ ２００７年２月２日放送）
●蘇我氏は逆臣ではなかった！
●「大化改新」は保守勢力のクーデターだった！
【奈良県明日香村、甘樫丘東麓での蘇我入鹿邸の発掘調査が進むにつれて蘇我氏は天皇家の逆臣ではなかったことが徐々にわかってきた。むしろ蘇我氏は逆臣どころか、天皇家を守り、倭国全体を守るように努力していたことがわかってきた。このことは古代史上のこれまでの学説を大きく覆すもので驚きました。昨年の春あたり、一部の新聞で「蘇我氏は逆臣ではなかった」という記事が連載されていましたが、まさか・・と思って気にも止めませんでしたが、今回のＮＨＫの放映を見てやはりそうなのかな・・と思いました。】
１．天皇家を外敵から守っていた蘇我氏
①外敵から守るための要塞だった甘樫丘
甘樫丘に建つ宮門（みかど）と称される蘇我入鹿邸は大邸宅ではなく、非常時に備えてたくさんの武器庫と思われる建物を有していた。発掘調査で、高床式と見られる建物が多く見つかった。専門家によるとこの要塞の機能を持った甘樫丘は、高句麗のプヨの都の要塞に似ていてそれをモデルにした可能性があるという。蘇我氏は祖先や親族に帰化人を持ち、唐や高句麗の情報は容易に入手できたという。
②飛鳥の要所に要塞を配備した蘇我氏
宮殿・飛鳥板葺宮を囲むように配置されてる、「飛鳥寺」・「島ノ庄」・「甘樫丘」。飛鳥寺は当時大きな伽藍を持ち蘇我馬子が建てた寺で、宮殿を守っていた。馬子の邸宅があった広大な敷地の島ノ庄も要塞の役割があった。甘樫丘の蘇我蝦夷の邸宅付近からも、不穏な動きが察知できるようになっていたという。
２．飛鳥の防衛と、唐との外交政策に力を入れた蘇我氏
６１８年に成立した唐王朝は周辺諸国においてもっとも脅威の存在だった。蘇我氏は飛鳥の防衛に力を注ぐと共に、唐との外交政策を重視して、蘇我蝦夷（えみし）の代の時、６３０年に遣唐使の派遣をしています。蘇我氏は帰化した親族から朝鮮半島の様子を知らされていたために、中国と親和策を進めた方が良いと思っていました。この頃「伎楽面」をつけた舞踊がさかんに催されますがこれは唐に対する敬意の表しになるそうです。
３．「大化改新」・・なぜ入鹿は殺されたか・・蘇我氏と外交政策をめぐって対立６４５年・６月１２日、入鹿は板葺宮で暗殺された。天皇家をつぶそうとしていた・・というのは今までの学説でしたが、そうではなかったようです。「蘇我氏の唐への外交政策に反対」する保守勢力、中大兄皇子・ 中臣鎌足による暗殺でした。
（写真；明日香村・飛鳥板葺宮跡・・甘樫丘も見えます）
４．大化改新はされず、もっぱら土木事業に力が注がれる
６４５年以降、中央集権化は進められず、もっぱら天皇家の権威を強める方に力が注がれた。酒船遺跡（亀形石造物など）・３万人を動員した大運河など大土木事業が展開された。
５．６６３年・白村江の戦いで完敗
６６０年、唐・新羅の連合軍は百済を滅ぼした。国内にも唐・新羅の脅威が迫っていた。６６３年、斉明天皇・中大兄皇子は白村江の戦いに敗れる。唐の巨大軍艦・桜船（ろうせん）は、矢を射る設備・投石の設備・燃えにくい装備などを完備し、倭国の船はことごとくつぶされ死者が続出したという。
６．方向転換して、中央集権化が推し進められる
唐の圧倒的な軍事力に恐れをなした倭国は、天智天皇の代になってから唐に習った律令国家・中央集権化（公地公民化）を積極的に推し進めた。飛鳥をぐるりと囲む８ｋｍに及ぶ城壁が張りめぐらされたり、瀬戸内海や九州の要所に強靱な山城が築かれた。
７．「大化改新」の記述で、書き換えられた『日本書紀』
専門家の鑑定によると、大化改新が記されている「日本書紀（巻３０・系図１巻）」のうち、巻２４・巻２５には多くの記述の誤りが見られるという。特に巻２５には２４ヶ所の表記上の誤りがあるという。「日本書紀」では蘇我入鹿は逆臣とされていて、編集の最終段階で大幅に書き直されたとされている。この編纂にあたっていたのは、元明天皇・持統天皇・藤原不比等（鎌足の息子）だったという。
感想
【白村江の戦いで唐に敗れて、中大兄皇子らは蘇我氏の外交政策の正しさに気づいたと思います。蘇我氏は先見の明があり、グローバルに国家をとらえていたと思います。倭国や天皇家に尽くしてきた蘇我入鹿・蘇我蝦夷親子の無念・くやしさは計り知れない・・と思いました。また１４００年近くも歴史上逆臣扱いされてきて、気の毒なことをした・・と思いました。今回の入鹿邸の発掘はとても有意義だと思います。】
