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紫式部の部屋34. 「紫マンダラ・源氏物語の構図 

河合隼雄 小学館 2007.3


●『源氏物語』の女性は全て紫式部の分身であった!
 

河合隼雄
1928年、兵庫県生まれ。京都大学理学部数学科を卒業後、カリフォルニア大学留学。1965年スイスのユング研究所においてユング派精神分析家の取得。京都大学教授や国際日本文化研究センター所長となる。著書に、『ユング心理学入門』、『無意識の構造』など心理学を中心とした著書を多数出版。




【本書は、2000年に発刊されました。著者の河合氏の専門は心理学ですが、『とりかえばや 男と女』、『昔話と日本人の心』、『明恵 夢を生きる』、『物語をものがたる』、『夢と昔話の深層心理』など、物語を心理学の観点から分析した著書も多い。この『紫マンダラ』もその仲間に入る。源氏物語を通して、筆者は、光源氏の存在感の無さに気が付きます。源氏が須磨に退去したあたりから、人間臭くなるものの、大部分の出番では別に主人公は光源氏でなくても、昔男ありけり・・程度の存在感しか無い・・と指摘。存在感があるのは登場する女性達だけ、光源氏は女性を書くために必要な「便利屋」だったに過ぎない・・と指摘。

そして、源氏物語に登場する女性達を、光源氏を中心とした「女性マンダラ」の構図に仕立てあげた。その構図の分類は、母的な役割・妻的な役割・娘的な役割・娼的役割・・と4つに区分されていて、その一部を紹介すると、母的な役割の女性には大宮、妻的な女性としては葵の上、娘的な女性に玉鬘、娼的な女性に朧月夜・・などを掲げている。それぞれの女性が光源氏にとってどんな役割を果たしたのか、緻密に分類されている。「紫の上」のように多様な側面を持ち合わせた女性こそが紫式部自身と筆者は分析した。そして一番驚くのは「登場人物の女性は、全て紫式部の分身であった・・」というユニークな見解です。】



【感想
紫式部の心の内にある、母・妻・娘・娼の感性をすべて具現化したのが『源氏物語』なのだな・・と思いました。

紫式部の曾祖父である藤原兼輔は、醍醐天皇時代の三十六歌仙のひとりで、歌壇の代表者で、古今和歌集・後撰和歌集・百人一首にも歌が残されていて、紀貫之などとも華々しい交流があったという。紫式部の父、藤原為時も詩文の才能に長けていて、式部やその弟・惟規に詩歌や司馬遷の『史記』など広く文学を学ばせた。式部の文学的才能は、代々の親譲りによる。

さらに才能に磨きがかかるのは、多様な人生経験にもよる。当時26才というのは晩婚だったようだが、式部は26才の頃、倍の年齢差の藤原宣孝と結婚し一女をもうける。母になったことで女性の感性に磨きがかかったと思う。しかし結婚後、夫は数年で他界する。式部はわずか数年の間に、妻となり、母となり、未亡人となる・・実にドラマチックな体験となる。この体験が『源氏物語』の源動力となり、様々なバリエーションをともなった女性を生み出せたのだと思う。

また幼い頃母を失って、母を知らない寂しさも『源氏物語』の起動力になっていると思う。様々な役割を演ずる光源氏の妻・紫の上・・この登場人物の名前から紫式部という名になったという説もある。紫の上や登場する女性はまさに紫式部の分身だったのである。


(写真;風俗博物館・京都市下京区)

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