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紫式部の部屋32.

私本・源氏物語 田辺聖子 実業之日本社

2007.3


●翔んでる光源氏、痛快ユニークな源氏物語のパロディ

著者・田辺聖子・・1928年、大阪で生まれる。1976年より兵庫県伊丹市に在住。様々な受賞歴を持つ。

@1956年・『虹』で大阪市民文芸賞 A1964年・『感傷旅行』で芥川賞 B1987年・女流文芸賞 C1993年・『ひねくれ一茶』で吉川英治文学賞 D1994年・菊池寛賞 E1995年・紫綬褒章 F1998年・泉鏡花文学賞、読売文学賞 G文化功労賞  

◇『新源氏物語』は宝塚で舞台化 ◇自伝『芋タたこなんきん』はNHK朝ドラで放映中

本書は、1980年に出版された単行本です。この単行本は現在絶版になっていますが、1985年に文芸春秋より文庫本として出版されています。単行本は重いしがさばりますが、きれいな装丁やすてきな挿し絵が入って、文学をじゅうぶん堪能できる魅力があります。本書も岡田嘉夫さんのきれいな表紙(装丁)とユニークな装画(挿し絵)で読書の楽しさが倍加していたように思います。最近気がついたことですが1970年代〜1980年代に出版された単行本は、情感があり、作り方が丁寧で手間と暇をかけていたな・・と思いました。

本文について・・『源氏物語』のパロディ版 

☆主人公・光源氏の父は時の帝・桐壺帝(きりつぼのみかど)、母は桐壺更衣(きりつぼのこうい)。正妻は葵の上、舅・葵の上の父は左大臣。源氏は二条の邸に住んでいますが、行けば手厚く丁重なもてなしを受けるものの、気位が高くイヤ味を言う正妻
や舅の左大臣がいる三条にはつい足が遠のきます。源氏の乳兄弟の藤原惟光(これみつ)や従者のひげ男・伴男(ともお)を伴って、夜な夜な数々の女を訪問します。

★源氏は見目麗しい好青年でどこに行ってもモテモテなのですが、悲しいかな、どこを訪ねても自分の理想とする女性に巡り会えません。お伴の惟光は、「早う、女に後朝(きぬぎぬ)の文を書きなはれ」と源氏をせっつきますが、源氏は眠たがって「もうどないなってもかめへん、眠たいのや」と言ってききません。
(後朝・きぬぎぬの文・・女の人を訪ねて行った翌日の朝、男が出す恋文。これがないと男に誠意が無いことになり、女性は恋文が届くのを一日千秋の思いで待ってるという)

☆ここに登場する源氏は上品で気位の高い源氏ではなく、京都弁・関西弁丸出しの三枚目、おっちょこちょいで間抜けでユニークな人物として描かれています。頭中将(とうのちゅうじょう・・葵の上の兄)と典侍(女)の家ではち合わせになって取っ組み合いをしたり、目をかけた少女若紫からさんざんコケにされたり、明石に舟の中で「強姦」でなく「強
男男男」されそうになる。明石は「言うことを聞かないと舟を沈める」と言って源氏に迫ります。賀茂祭の数日前に行われる御禊(ごけい・・斎宮の禊・みそぎ)の行列の場面では、源氏の正妻三条の邸と側室六条の邸が一条大路でバトル戦を繰り広げて、「赤勝て」「白勝て」「あんた、どっちのひいきどす?」「ワテ、こっちの方や」・・といった具合に展開します。文章が気取ってなくて楽しい。

【古典はどうもとっつきにくい感じがありますが、古典に堪能な著者が原典を崩しに崩して、楽しく親しみやすい『源氏物語』に仕立てています。田辺聖子さんっておもしろい作家だな・・って思いました】

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