展覧会報告 (2005.7〜) トップページに戻る  目次に戻る

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NO10 (2006.4.5)

「京都文化博物館」・・特別展・京の食文化展(京料理・京野菜の歴史と魅力) 
京都市中京区三条高倉


★3F・・美術・工芸品の展示。映像ホールでは、昭和20年代・30年代のモノクロ娯楽映画を定期的に上映 

●別館・・赤レンガの旧日本銀行京都支店(重要文化財)・・明治を代表する、ちょうど100年前の名建築

日本の近代建築の祖ともいうべき辰野金吾とその弟子・長野宇平治が設計した別館は、明治39年(1906)に竣工し、今年で100年目を迎える。明治を代表する建築として保存・公開されている。ホール(右の写真)では展覧会やコンサートも行われている。ホール左の柵は銀行の窓口だったもの。
















●2F常設展示コーナー・・「京都の歴史と文化」
・・特に印象的だった展示

平安京建設前後から明治・大正までの1200年の歴史を持つ都市京都を、歴史的な変遷を背景に、そこに生きていた人々の生活を中心に展示されています。

@数々の模型
平安京の表玄関・羅城門の復元模型は製作の課程などが興味深い。桂離宮・藤原氏嫡流の邸宅・東三条殿・柏屋京都本店模型など楽しめます。

A洛中洛外図屏風
16世紀の初めに描かれた、洛中洛外図屏風からはお寺や神社・人々の暮らしぶりがわかる。当時の清水寺や、東福寺、北野天満宮、大徳寺、金閣寺など数々の寺社の絵がビデオでUPされわかりやすい。
現在と違う枯れた味わいの趣の寺社が何とも感動的でした。

B平安の災害・・疫病と大火、集団盗賊
都市に人口が集中したことによる災害の展示も印象的でした。北野天神絵巻や伴大納言絵巻で大火や疫病の様子がしるされています。鴨川が氾濫したあとは、必ず疫病が流行したそうです。その疫病による死に様は阿鼻叫喚の地獄絵図のようです。また、1177年都を襲った大火・「太郎消亡」や後に起こる「次郎消亡」の規模の展示も広範囲で驚きました。集団盗賊に襲われ、殺害される人々・・都市に暮らすことの暗の部分も圧巻でした。

C京のまつり・・都市に暮らすことの喜びと苦しみ、まつりは喜び

京のまつりの多くは御霊会(ごりょうえ)を起源とする。御霊会は貞観5年(863)、神泉苑で初めて催された。京の町に災いをもたらす非業の死を遂げた人々の霊を慰めるためである。「祇園会」は今宮神社の「やすらい祭り」とならい、
慰霊のための祭礼である。

【主なまつり】

★1月14日・・日野のはだか踊り 
★3月15日・・嵯峨野お松明 
★3月第4日曜・・はねず踊り 
★4月第2日曜・・「やすらい祭り・今宮神社」 
★4月29日・・曲水の宴(伏見区城南宮) 
★5月15日・・葵祭り(下鴨神社) 
★5月第3日曜・・三船祭り(車折神社) 
★6月20日・・鞍馬竹伐り式(たけぎりしき・鞍馬寺) 
★7月17日・・祇園祭(八坂神社) 
★8月16日・・大文字五山送り火 ★10月10日・・牛祭り(広隆寺) 
★10月22日・・時代祭り(平安神宮) ★11月3日・・曲水の宴(伏見区城南宮)



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★4F 特別展・京の食文化展(京料理・京野菜の歴史と魅力)

京料理・京野菜・京菓子・京漬物など、京都の食については、1200年の歴史に裏付けられた伝統の重み、専門の職人たちにより培われた本物の味など、季節を問わず多くの人を惹き付けてやみません。
健康にも良いといわれる魅力に満ちた食のすべてを「京の食文化」として、歴史的・民族的な観点から紹介しています。京都の食文化は、日本を代表する食文化であるとともに、地域的な特徴も併せ持っています。食べるだけでは味わい尽くせない京都の食の魅力が、絵画や文献、再現模型、民具、映像などで紹介されていました。




●第一部・・京料理の歴史(文献・絵画が多い)

★京料理の分類とルーツ・・

@専門店で作られた物と、A家庭料理のお番菜(おばんざい・お惣菜)の二つにおおまかに分類できる。茶会席、京懐石をまとめたものが京料理。

平安時代以来の公家社会の
「大饗(だいきょう)料理」「本膳料理」、鎌倉時代以降の禅宗を中心とする寺院社会の「精進料理」、室町時代以降の武家や上層町人を中心とする「懐石料理」などを継承している。現在の京料理は百年前に確立した。


【平安時代】

○行事食・・
江戸時代享保8年(1725)「延喜式(えんぎしき)」より

平安時代の行事の場において、必要となる食事の種類や数量などを細かに掲げた大膳職(だいぜんしき)の記録が「延喜式」に残されている。
たとえば、
五月五日の節では、粽(ちまき)・糯米(もちごめ)・大角豆(ささげ)・搗ち栗子(かちぐり)・枇杷(びわ)・筍子(たけのこ)・甘葛汁(あまずらしる)などが必要とされた。

○大饗料理(だいきょうりょうり)・・江戸中期18C 「年中(ねんじゅう)行事絵巻」より

平安時代、大臣に任じられた際の大臣大饗などとして出された料理。
身分に応じて座や机、料理の品数が異なった・・饗宴の場で差別待遇されていたのですね。
料理の内容は、生物(なまもの)・干物・唐菓子・木菓子・など種類ごとに皿に盛られ、手前の調味料(塩・酢)で味付けして食べるようになっていた。具体的には、飯・梨子・鹿・猪・鴨・干鳥・雉・桂心・焼き蛸・蒸し鮑(あわび)・貝・鯛・鯉・鱒・押し鮎・煮塩鮎・海月・大根・蕪(かぶら)・糠漬け瓜・醤漬け茄子など。

箸と匙(さじ)を用いる点や、料理数が偶数である点など、中国大陸や朝鮮半島からの影響があったとされる。


○皇太子元服食・・朱塗りの台盤に、木菓子8種類が用意された


【鎌倉時代】

江戸時代 享保20年(1737)「春日権現記(かすがごんげんき)絵巻十三」より

この絵巻には、病で寝ている勧修寺(かんじゅじ)の晴雅(せいが)のところに病気平癒の加持に来た僧と、それを見守る晴雅の両親が載っています。この絵巻の同じ画面の中に
僧侶に出す料理を作る台所の絵がありました。野菜を切る者(女)、鍋で汁を炊く者(男二人)、膳に盛りつける者(男)・・鎌倉時代の台所のようすがわかります。この時代はまだ、いろりの火だったようです。


【室町時代】

江戸時代の写本、「酒飯論(しゅはんろん)絵巻」より

下戸と上戸の3人の人物が、酒と飯の優劣を口論した「御伽草子」を絵巻にしたもの。
酒宴や座敷での食事、台所での料理の場面を描いていて、室町時代の台所や饗宴の情景がわかる。

☆精進料理・・

魚や肉を用いず、穀類や野菜で作る料理をいう。中国では5・6世紀ごろから始まり、仏教と共に日本に伝わったが、本格的に成立したのは、鎌倉以降の禅宗寺院においてである。内容は、
穀物粉・野菜・きのこ・果物を用いたもので、その調理技術も発達した。寺院から一般に普及し、日本料理の形成に大きな影響を及ぼした。



【江戸時代】

☆南蛮料理の発達
かすてら・てんぷらり(鶏肉の黄金炒め)・魚の揚げ煮・ですへいと(鶏肉の料理)・骨抜き(鶏肉の料理)・あかもていり(ゆで卵に鶏肉を巻いたもの)・くしいと(鶏肉・魚・大根を一緒に煮たもの)

☆懐石料理・・
茶の湯で出す簡素な料理で、わび茶の発達に伴って室町時代後期に完成する。精進料理の茶礼の作法、本膳料理の形式と料理法の一部を受け継いだもので、料理形式の最上のものとされる。温石(おんじゃく)で腹を温めるのと同じ程度に
腹中を温める軽い食事の意味から「懐石」の文字が使われたとするが、古くは「会席」の文字を用い、江戸時代中期から「懐石」と表記されるようになった。
写真は、享保10年(1725)の茶懐石料理;御汁(おつけ)はナメコ・百合根、芋の葉のみそ汁、鴨肉の炒り煮・鈴葉添え、焼き物(鯛の板焼き)・花塩添え、吸い物(チョロギと小海老のすまし汁)、猪口(ちょく)・コノワタ、菓子(蒸しカステラ)・しいたけ煮しめ添え。・・「お菓子」のカステラに、しいたけの煮しめが同じ皿に・・「オカシ」いなあ・・・(写真右)


☆本膳料理
室町時代に確立した日本料理として近代まで引き継がれた。高足膳を用い、調味した焼き物や煮物、汁物などが並んだ点に特徴がある。
(写真;江戸時代の貴族の祝宴の情景)



☆お番菜(おばんざい)・・江戸後期から発達


にんじん煮・厚揚げと青葉のたいたん・かぶらとふろふき・大根とブリのあらのたいたん・棒だらの甘露煮・おやきのたいたん・ひじき・焼き豆腐とタケノコのたいたん・大根葉の汁・かずのこ・三つ葉のおしたし・なます・豆腐冷やっこ・芋のたいたん・タケノコとわかめ・おからetc・・


【近代】

☆会席料理・・
江戸時代後期から盛んになった料理屋の宴会料理である。本膳料理や懐石料理のような料理の様式や作法は特にない。料理屋の座敷や離れを食事の場として利用し、そこの料理人が用意した献立に沿って料理を出した。現代にも続く料理の形式である。




●第二部・・京の食材(魚・京野菜)、京の伝統的な加工品・・・底流はもてなしの心


☆魚・・
♪さかな、さかな、さかな〜、魚を食べるとー、さかな、さかな、さかな〜頭が良くなる・・食べてるけど良くならないよ〜
海から遠い内陸の京都は若狭で捕れた魚を食材とした。若狭の久々子湖(くぐしこ)で捕れたウナギを、京都二条木屋町の生州町(いけすちょう)の活けすに運んだ。「活けす」に運んだ人は「イケズ」じゃないよー。

鯖街道(さばかいどう・・若狭と京都を結ぶ道)・・
さばが移動するから、さばが・いどう→さばかいどう(鯖街道)。沖合の若狭の海で網を引いて捕れた魚(カレイ、タイ、サバ)を浜で一夜塩水に浸し、干して乾かしてから出荷した。

☆京野菜・・
京都の地場(じば)の固有の品種の野菜をいう。地名を冠した野菜も数多い。鹿ヶ谷カボチャ・菊カボチャ・加茂ナス・聖護院ダイコン(大型)・桃山ダイコン・辛味ダイコン・青味ダイコン・聖護院カブラ(大型・・千枚漬け用)・舞鶴カブラ・赤カブラ・トウガン・桂ウリ(大型のシロウリ)・シロウリ・マクワウリ・ニガウリ・唐いも・クワイ・ヤマブドウ・すぐき葉・金時人参(京人参)・シシトウ・万願寺トウガラシ(大型)etcの模型展示。


☆伝統的な加工品
●京菓子の発達(写真右;近衛家に伝わった京菓子の注文帖)
●上質の大豆と上質の水で作った京豆腐、湯葉、湯豆腐 
●伏見の名水・伏水を使ったお酒 ●上質な白味噌 ●上質なすぐきの漬け物 ●宇治の上質な味わいのお茶 ●丹波の黒豆料理 ●大徳寺納豆
etcのパネル写真や実物による展示。




☆★ビデオによる展示☆★

@京野菜の産地直送、振り売りのようす A朝採りタケノコを掘るようす B鴨川納涼床のはも料理の紹介 C千本釈迦堂の大根炊きのようす 

D生間流式包丁(いかまりゅうしきほうちょう) 「藻隠れの鯛」・・雅楽の演奏をバックに厳かな包丁さばき

まな板の鯉
ではなく、鯛を直接に手を触れずに包丁刀と、2本まな箸だけで切り分け、瑞祥の決まった形に並べ広げる演技で、室町時代以前からの歴史を持つ。鯛をきれいに3枚におろして、四方に飾る見事な演技でした。
生間流、四条流などの流派がある。京都では、八坂・貴船・北野天神・恵美須・吉田の神社などで、毎年決まった日に「生間流式包丁」が奉納される。「神厳(しんげん)の鯉」の演技もある。


感想・・京の食文化には1200年の伝統が息づいているのだな・・と思いました。美を愛する繊細な心、もてなしの奥深い心も食文化の底流に流れているのですね。



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